金の土、銀の土

作物を美味しく育てるためにまず何が必要だと思いますか?

いろいろと考えを巡らせてゆくと最後はやはり「土」にたどり着くのでは無いでしょうか。「土」こそが美味しく、健康な野菜を生み出す源である。これは真実です。土が健全で、健康でなければどうやって真の美味しさと栄養価をもつ野菜が栽培できるでしょう。

では、その「土」がどういう状態で、どのように影響して、美味しく健康な野菜を育てるのでしょうか。「良い土」にはどんな特徴があるのでしょうか。むかし野菜の邑の畑を例に紹介していきたいと思います。
むかし野菜の邑には「土」の状態に応じて3つのランクがあり、「金 銀 赤」 と順に、草木堆肥を施してきた年数に応じて土の状態と、生産できる野菜とその味に大きな差が生まれます。


「赤ラベル」
草木堆肥歴3年未満の畑。土は硬く、栄養価やミネラル分、微生物の数も少ない。

1年目に漬物用にと高菜を植えてみたが、成長する前に花芽をつけてしまった。野菜は正直で残酷だ。

新しく借り受けることになり、これから土作りを行っていく初期段階。
以前の耕作者がどのような方法で管理してきたかで、出足が随分と違います。化成肥料や除草剤などの化学物質を使っていた場合は、土の目が細かくがっしりと固まり重たい土になっています。このような土壌では水はけも悪く、地表面に肥料成分が残っているため、野菜の根は深くまで張ることはありません。どの作物も驚くほどに成長せずに、出荷できないままトラクターで漉き込むことになります。
草を取るにも、土が硬く鎌を持つ手もすぐに痺れてくる上に、しつこい種類の草ばかりでとても時間がかかります。
味は薄く、深み・旨味がまだまだ。筋っぽさも残りむかし野菜として納得できるまでには、まだ時間がかかります。
小松菜や青梗菜などの葉物野菜で畑を回転させて、土作りを続けることで、2年目以降は、土の感触や草の種類、野菜の生育に大きな違いが生まれてきます。

「銀ラベル」
草木堆肥歴5年未満の畑。土の団粒化が進み大きな変化が現れ始める。

レーキで畝を平らに慣らす。土が軽くなり、楽になるまで最低で3年。

3年が経過すると、土が柔らかくなり、粒状になっているのが確認できます。(団粒構造)これによって、粒の間に空気と水を蓄えることができるようになり、水はけがよく、作物の根が張りやすいふかふかとした土へと変わっていきます。この頃になると、草取りや鍬・レーキを使った畑仕事の際に土の軽さが変わってきたことを実感できるようになります。葉物野菜の味も合格点をもらえるまでに。ブロッコリー・ズッキーニ・ゴーヤなど地中にしっかりと根を下ろす作物の栽培ができるようになり、葉物野菜以外にもレタス、じゃがいも漬物用のたかなや大根などに挑戦できるようになります。
甘みが乗ってきてむかし野菜の特徴である香りも感じられるようになってくるのもこの頃から。商品として自信を持ってお届けできるのもこの「銀ラベル」からです。

「金ラベル」
草木堆肥歴5年以上の畑。まさに金の土。
味・香り・歯切れ、その存在感は桁違いです。

金ラベルの人参は最高の香り。もちろん葉っぱまで食べられる。

キャベツが結球(葉を巻き込みながら成長すること)するためには、土の力が不可欠。

この頃になると、なにを育ててもしっかりと旨味のある、深い味わいの野菜ができます。鍬を扱う仕事も本当に楽で、リズムよく畝上げができるので、気持ちよく楽しいほど。土の団粒も深さ20cm以上になり、ナスやピーマン・トマト等の実物は、より深くまで根をおろすことと、収穫期間が長いため土の力が無いとすぐに枯れてしまいます。また、人参、セロリなどは、はっきりと差が現れるので、「金ラベル」に達するまでは栽培しません。
今の時代、時間と手間と労力のかかりすぎるこの農法を生産者はもういません。それを評価する消費者の数が減っていることにもその一因はありそうです。

かつての日本では、当たり前だった自然循環農法を、復活させる為のカギは「草木堆肥のみを使用した地道な土作り」にあると思います。

ここにたどり着くまでには、長い時間をかけた実験と失敗の数々がありました。昔ながらの土作りで、小さかった頃に食べたあの懐かしい味と香り。代表の努力と汗、涙がここに結実しています。※佐藤自然農園のブログにて代表佐藤の思いを綴っています。

次回は、金の土の源であり、むかし野菜に最も重要な「草木堆肥」についてお話しします。ではまた次の金曜日に。

むかし野菜と有機野菜


この冬は、暖冬の影響で大根などの根菜がとてもよく成長しています。
セロリも例年であれば霜にあたって凍結し、スポンジ状になってしまったり、成長しきれずに萎縮してしまったりと冬場の栽培には特に気を使うのですが、美しく、ハリのあるセロリが収穫できています。もちろん味・香り・歯切れは抜群です。

トンネルの中で勢いよく育つ今年のセロリ
今年はセロリを粕に漬けてみた。

「むかし野菜ってどういうこと?」
「有機野菜なんでしょ?」と尋ねられることがあります。
確かに「有機野菜」「オーガニック」という大きな概念の中に「むかし野菜」は含まれます。しかしそれは似て非なるもの。また、「自然農法」という考え方とも少し違います。

「先人の知恵草木堆肥」ひとつかみの堆肥の中に数え切れない数の放線菌と微生物の環がある。

私たちは土作りに使用する草木堆肥をすべて、自分たちで作っています。 草と木の葉、剪定枝を粉々に砕いたチップに発酵の手助けとして、少しの牛糞を混ぜ1〜2ヶ月かけて作ります。堆肥の中には、測定不能な数の菌や微生物が住み、土の中で餌となる有機物を分解しながら、作物の生育に必要な元素・ミネラル分を供給しています。彼らが自然循環の大きな環のなかでとても大切な役割を果たしているのです。
※堆肥作りについては後日詳しく書きます。

これこそが日本で古くから繰り返されてきた農業の形でした。
「自然循環農法」私たちはこの農業のあり方をそう呼ぶことにしました。
そして先人たちに敬意を込めて「むかし野菜」と名付けました。

自然と共に生活し、地に足のついた先人たちの知恵がそこにありました。その知恵と、知識と豊かな食文化を今に伝えること、それが「むかし野菜」という言葉に全て含まれています。昔食べた野菜のあの懐かしい味を復活させるため、「自然循環農法」での野菜生産を根底に、「結の制度」「本物の無添加発酵食品」「昔ながらの素朴なおやつ」を提案していきます。

すべては「美味しい」の一言のために。

 

むかし野菜の邑ブログ始まります。

新年あけましておめでとうございます。

本年は「むかし野菜の邑」と「佐藤自然農園」のホームページの役割を明確にします。
地域の活性化、衰退する農業への対策、周辺地域を巻き込んだ自然循環農法の啓蒙啓発活動、農園主である佐藤茂行の思想を「佐藤自然農園」に。
その思想、考えを受け継ぎ広く情報発信をしながら、体験イベントの報告や、農園直売のお知らせ、季節ごとの農作業、加工品の開発工程の紹介やお客様とのコミュニケーションを「むかし野菜の邑」で、と考えています。

むかし野菜の邑は、佐藤自然農園を基幹農園とする、生産者が集い形作る小さなグループです。このグループには既存の流通によって当たり前になりすぎた野菜の価値観(見え・形・価格)に異を唱える生産者が集まり、大分の地から全国へ価値観を同じくする仲間(むかし野菜を愛しんでくださるお客様)とともに歩み続けています。

庄内の4反ある畑へ堆肥を撒き、はだか麦を蒔いた。

穀類加工品の試作として、野菜まんじゅうと石垣もちを作った。

香ばしい風味のスコーン

クレープ生地はフライパンで簡単にできた。

大分の郷土料理やせうま。

穀類の生産も一応の段取りを理解することができ、改善、工夫の余地も見えてきました。お客様からの「美味しかった。」「安心して口にできる穀類があって嬉しい。」との言葉をいただくと、軽トラック12台分の堆肥を広大な畑へ撒くことも、35℃を超える真夏の草刈りも、収穫してから商品としてお届けできるまでの長い製造工程も苦ではなくなります。もっと良い味を、もっと沢山の「美味しかった。」を集めるためにチャレンジしていきます。

また、新たな試みとして農園での直売を開始しました。
毎週水曜日、通常の出荷作業に合わせて地元大分の方達へ向けて、むかし野菜の邑の取り組みと考え方を発信する一つのチャネルとして、機能させていきたいと思っています。また地域に溶け込み近隣の団地や、小学校、幼稚園とともに食育プログラムのきっかけとして、農園での収穫体験会とむかし野菜を使った素朴なおやつの実演イベントなど、様々な試みを形にしていきます。ホームページ上でブログと合わせて発信していきますのでご覧ください。

皆様にとって本年も幸多き一年となりますよう「むかし野菜の邑」スタッフ一同願っております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

むかし野菜の邑