これからの農業経営のあり方を考える

むかし野菜を生産する上でもっとも大きなネックが、多くの労力と時間的コストとリスクが伴うことです。
自然に順な栽培方法、自然循環農法によって得られる、味と香り、栄養価と引き換えに、除草剤を使わない事によるリスクと膨大な手間を必要とします。

この問題を解決するために、むかし野菜の邑では、かつての農村でのしきたりとして機能していた「結いの仕組み」という考えを下地に運営と活動のあり方を緩やかなルールとして採用しています。

庄内にある穀類畑。大豆とむぎを生産している。共同作業でなければ消費者が求める高い品質は維持できない。

かつて、日本の農村にはどこにでもあった結の仕組み。
共同で田植えをし、稲の刈り取りを行う。部落には長老達が居て、皆の纏めを行ってきました。
現在では、トラクターやコンバインなどの機械化が進み、各農家ごとに機会を保有し始め、共同での作業を行わなくなっゆきました。除草剤・農薬・化学肥料によって、農業の近代化・機械化・効率化・省力化が進み、徐々に結いの仕組みは消えてくことになります。(協働という考えが必要ではなくなり、繋がりが薄れていった。)
同時に、労力のかかる雑穀生産や野菜作りなどの畑作は、見られなくなりました。 
 
有機野菜や自然栽培を中心にした高集約型(手作業の多い畑作)農業は前述の通り、労力の塊です。
また、孤立する個々の農業では、これからの時代巨大流通(農協や大型スーパー)に対抗することは困難です。
自然循環農業と多種多様な農業を未来へと繋いでいくため、グループ化が必要であるとの結論に至り、現在版の「結いの仕組み」作りに着手しました。
グループメンバーの畑であれば、何かあれば駆けつけることができるし全員で一気に仕事を終わらせることもできます。

研修生も含め、全員での堆肥振り。一人ではいつまでも終わりが見えない。

植え込みや種まきも短時間で済ませて、また次の畑へ向かう。誰が管理する畑でも同じこと。

「結いの仕組み」 3つのメリット。
  1. 機械や器具、種苗費を共同で利用するので、経費を抑えることができる。
  2. 必要な労働力を、必要な時に集中させて短時間で大きな効果を上げることができる。
  3. 研修生を受け入れ、担い手として教育したのちの独立支援としての受け入れができる。

人、一人でできることには限界があり、高が知れています。
どんなに強靭な肉体があっても、3時間の作業を30分にすることはできません。
どんなに優れた頭脳と知識があっても、2つの仕事を同時にこなすことはできません。
どんな孤独にも耐えることができる精神力も、仲間の存在によって得られるモチベーションの比較にならないほど差があります。

この邑に集う個々の農園と、一人一人のメンバーが力を合わせて、補い合い、高め合い、笑い合いながらこれからの時代の新しい農業経営のスタイルとして確率させていきたいと思っています。

次回は、自然循環農法で作る「麦」についてお話ししたいと思います。では、また次の金曜日に。

身体が喜ぶ、乳酸菌の力

2月になり節分、立春と暦は進んで行きますが、朝晩はまだ寒い大分です。
ですが、例年に比べるとやはり暖かく、春めいてくるのもすぐのような気がします。

火曜日に堆肥を作った。これだけあっても4月からの夏野菜に向けてはまだ足りない。

お漬物が毎日の食卓から姿を消したのは、いつからだろう。
質素倹約が美徳だという考えはいささか古いですが、それでも食卓に、白いご飯と、味噌汁、そしておいしいお漬物があればホッと安心できるのが日本人である証拠でしょう。この感覚は誰もが共感できるはず。

むかし野菜の邑のテーマの一つに「健康で安全な昔ながらの食文化の再提案」があります。その中でも特に力を入れているのが、保存料・化学調味料無添加 本物の発酵食品である「お漬物」です。
むかし野菜の邑で作るお漬物は、塩や粕といった基本の調味料以外は使用しません。たとえば、昆布やかつお節などを加えて、旨味成分付け足すことはしません。
瓜や高菜、セロリなどの野菜が持つ本来の旨味と、それをよりいっそう引き出す乳酸菌の力だけで勝負して、本当に美味しいお漬物を作りたい。その思いからです。もっとも、むかし野菜であるからこそ野菜から深い旨味が出るのです。

左から「瓜の粕漬け」「柚子大根」「セロリの粕漬け」「茄子の粕漬け」 うまい漬物があれば、めしも旨いし、酒にも合う。

いくつもの工程を経て、美味しい高菜漬けができる。

たくあんの用意も始まった。

今では、瓜・茄子・人参・セロリを粕漬けに。
大根の甘酢漬け・柚子大根・たくあん。
大分高菜・茄子の辛子漬け・シソの実の味噌漬け。
と10種類ほどのお漬物を製造し、お届けしています。

そのどれもが、皆様からとても良い評価をいただいていて、私たち自身も素直に「うまい」と思えるものです。「主人が一人で食べてしまうので、こっそり隠してます。」「子どもが大好きで、私たちの分がありません。」などなど、感想をいただくことがありますが、本当にありがたく、その言葉に励まされています。

日本全国に目を向けてみれば、美味しいお漬物がたくさんあります。今後はそれをヒントにむかし野菜の邑らしい、シンプルで深みのある美味しいお漬物を新しく提案していくのも面白いかもしれません。

健康で、豊かだった頃の食文化をもう一度取り戻したい。そのためにまた明日から頑張ります。

次回は、むかし野菜の邑が採用する、グループの運営方法「結いの制度」についてお話ししたいと思います。では、また次の金曜日に。

山と森、自然のサイクルを理解する。

大分にも雪が降り、束の間の雪景色となりました。
翌日には解けて元の景色にもとどおり。

5、6番の畑。午前中は強く吹雪いたが、午後になると晴れ間が見えほんの一瞬だけ冬らしい表情に。

むかし野菜をむかし野菜足らしめるもの、
それは紛れもなく「草木堆肥」です。その「草木堆肥」のことをどれだけ知っていますか?何が入っていて、なぜいいのか。今日はそんな「草木堆肥」のことをお伝えします。

読んで字のごとく「草」と「木」を主な原料とする肥料(肥料といっても窒素分は極端に少ない。)のことで、他の有機農法と大きく異なる部分です。種々雑多な草や木を混ぜ合わせるため、無限に近い微生物と菌が活発に生きています。初めは混沌とした中、微生物たちの活動も自然と均衡が保たれ、特定の菌が一人勝ちする事はありません。まさに自然のサイクルです。

農園で開催する体験イベントでは、「堆肥づくり」が一番盛り上がる。

「草」

まずは堆肥の原料を調達することから始まります。
草を刈り取り、それを軽トラックに積み込む。時折、造園業者から河川敷などの整備をした後の草が持ち込まれるので助かっています。ススキや茅、道端の草、畑の畔、などどんな草でも様々な微生物や菌が付着していますので良質な原料となります。

「木」

造園会社から、街路樹の剪定枝が大量に持ち込まれます。このままでは使えませんので、破砕機にかけ粉々にしたのち、葉と小枝とに選り分ける必要があります。
木は地中深くに根を張りたくさんのミネラル分、と微量な元素を枝葉に取り込むため、野菜にとって必要な栄養素を補給することができます。

「牛糞」

発酵を促す目的と、肥料として最低限必要な窒素分を補給するため全体の一割ほど混ぜ合わせます。抗生物質を多く含む配合飼料を与えないこと。乳牛であること。(品質の保持のため常に牛舎を清潔にしておかなければならない)といった条件をクリアする酪農家を現地に赴きしっかりと選んでいます。

この原料を元に、堆肥作りを行なっていきます。

  1. 草を約半反ほどの広さ(一回分)に均等に広げていきます。草の塊があちこちにあるままだと、発酵がうまく進まずに腐敗してしまいます。一番重要、かつ最もハードな作業です。
  2. 草の上に牛糞・葉や破砕屑の順で3層に重ねます。やはりムラなく均等に広げるのがコツです。
  3. トラクターでしっかり混ぜ合わせ、タイヤショベルで高さ2メートルまで積み上げる。ビニールをかけ1〜3ヶ月(夏場で1.5月)寝かせる。その間数回切り返しを行いようやく完成です。
  4. 完成した堆肥は、嫌な匂いがありません。深い森の中、カブトムシを取りに行った子供の頃の記憶が蘇ってくる。そんないい匂いがします。

真夏の堆肥作りは、過酷そのもの。これもむかし野菜のため。

今でこそ機械の助けがある。それでも畑が増え、穀類生産もとなると慢性的に堆肥が足りない。

持ち込まれる剪定枝。ミネラル、微生物、放線菌の宝庫。

大型の機械を使い、枝を粉々に砕く。

数え切れないほどの微生物と放線菌の住みかとなる。彼らが土を耕し、豊かな金の土を作ってくれる。

毎月1〜2回、この堆肥作りを行い全ての畑へ、繰り返し繰り返し投入していきます。今では、このように自ら堆肥を作る生産者がいなくなってしまいました。単純で簡単な化成肥料を使い、手っ取り早く収穫高を上げることが、農業の在り方として主流になり、矛盾を感じることなく消費されています。有機農業の現場でも、大手メーカーから購入した有機肥料で作物を育てているのが現状です。

事実、あまりにも多くの労力と時間、手間がかかります。その対価としてどれだけの理解と評価が得られるのでしょうか。まだまだ伝えたい事ばかりですが、またの機会にお伝えできればと思います。

次回は、加工品の中でも人気の高いお漬物についてお話しします。
ではまた次の金曜日に。