「自然野菜は高い」のうそ。

二十四節季 啓蟄「巣籠り虫戸をひらく」
冬の間地中に隠れていた虫が、戸を開いて外に出始めるころですが、今週は雨続きで虫も私たちも外へ出ていくことをためらっている感じです。

毎週水曜日に開かれるむかし野菜の直売所。雨の中傘をさして買いに来てくれる熱心なお客様も増えて来た。

むかし野菜の邑では、土作りの進行具合に合わせて「赤ラベル」「銀ラベル」「金ラベル」と3段階の基準を設け、価格の判断基準にしています。
例えば、じゃがいも。
「赤ラベル」500g 140円
「銀ラベル」500g 160円
「金ラベル」500g 180円
といった具合に、草木堆肥を施し続けてミネラルと土壌中の微生物群の健全な環境が出来上がるにつれ、やはり味と品質に価格を転化していくことで区別をしています。

ここで、一般的な有機栽培の野菜との違いを、コスト(労働力と時間)の面から比較して見たいと思います。

むかし野菜と有機栽培の比較

堆肥を原料から責任を持って作ることから始まり、最低でも3年の時間をかけて本当に美味しい味になるまでどれだけの労力がかかるでしょうか。それを押し付ける気はもちろんありませんが、知っていてもらいたいと同時に自信を持って価格に転化させていただきたいと思います。

1本140円の大根は高いのか

絶対的な価格で捉えると、100円と140円、同じ大根でも明白ですが、ここで何を基準にその価格を「高い」「安い」と捉えるのかを今一度考えてもらいたいと思います。野菜の本当の価値はどこにありますか?体のために、肉や魚では補いきれない栄養素をバランスよく摂ることができて、美味しく食べ続けられること。これこそが農産物の本当の価値であるはずです。真面目に質の高い農産物を生産して、その価値を高めていこうとする農業者の努力と苦労がいつまでも報われないマーケットの仕組みが、後継者不足と地域の疲弊を後押ししていることは間違いありません。

値段が高いから美味しいのではありません。

圧倒的に美味しいから相応の値段を提示しているのです。

毎週水曜日の農園直売も3ヶ月目になり、むかし野菜の味と香りの違いに気づいてくれた何人かのお客様は、毎週野菜と加工品をお買い求めにいらっしゃるようになりました。やはり直接お客様の声を聞くことができて、努力の結果が「ありがとう。美味しかったです!」の一言に詰まっています。

一人でも多くの方に、むかし野菜の価値をしっかりと伝えること。一人でも多くの方に食べてもらい、その違いに気づいてもらうこと。一人でも多くの方に、健康で明るい人生を送ってもらうことをこれからも地道に続けていきます。

次回は、春の訪れ「トウ立ち」についてお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。

むかし野菜流 密集栽培のススメ

草木、萌え動く3月。
毎年甘酸っぱい実をつけるブルーベリーも、季節の移り変わりを敏感に感じています。
今年も、たくさんの実をつけてくれそう。

今年も甘い実が沢山つくといい。

むかし野菜の邑には、狭い面積の畑を、いかに有効に使い収量と品質、その両面を担保しながら面積あたりの収入を高い水準で確保してゆく様々なノウハウがあります。密集栽培はその一つ。マルチを使うことなく、苗1本でも多く植え付けることができるようにと常に考え続けることで、1反当たり350万円(年)という、超高収益栽培が可能になるのです。これは露地栽培、しかも自然栽培という条件では驚くべきことです。

むかし野菜流の密集栽培は畑を作り、畝を立てるところから始まります。

2月からの研修生に鍬の使い方を教える。初めて鍬を握った日のことを思い出した。

畝下は、鍬1本分のスペースしかなく、正直歩きにくいです。慣れるまでは綱渡りのように左右のバランスを取りながら転けないように歩くことになりますが、草が生えるだけで、何も生まない畝下のスペースはムダそのもの。レーキをかける際も、1本でも2本でも多く植え付けることができるように、有効な面積を確保しながら、土の偏りを無くすように慎重に行っていきます。

定植後のキャベツ。3本づつを少しずらしながら植えることで最大限活用する。マルチを使わないのは有効な面積が減ることに加え、毎回大量のゴミが出てしまうから。

タネの蒔き方で収量が決まります。

大根・ごぼう・人参・小松菜・サラダセット・中カブ・サラダカブ・それぞれ品目ごとにタネの蒔き方が違います。「収穫時のサイズ・葉の大きさがどのくらいになるのか」「春・夏・秋・冬の成長速度」「経験と勘」いくつもの条件を頭に入れ、「梅雨にかかる時期なら、蒸れてしまうので少し薄めに」とか「ごぼうは葉っぱが巨大になるので近すぎると悪い」とか、実にたくさんのことを同時に考えながら作業を進めて行きます。

サラダカブのタネ。密集しすぎないように、少なすぎないように。こればかりは感覚で覚えるほかにない。

収穫もむかし野菜流

大きなものを穫れば、その空いた隙間を利用して2番手、3番手が大きくなってくれる。1つの畝で、長ければ4週間ほど収穫できる。

密集栽培では、作物自身に備わっている競争本能を利用することで、競い合いながら互いの成長を助け合うという利点もあります。また『規格サイズ』や『見栄え』に影響されないむかし野菜ですので間引きの方法が通常の逆になります。基本的な間引きは、小さく規格サイズに満たないものを狙って行います。そうすることで均一にサイズが揃い、収穫期になると一斉に収穫・出荷をすることが可能になるためです。
むかし野菜流では、一番成長が早く大きくなったものから収穫し、続いて2番手、3番手の成長を待って収穫する。といった具合に出来るだけ長く収穫することができるように調整しています。個別配送ですので、ご家庭で食べる野菜が無くなってしまわないようにと、露地栽培でありながら端境期を作らないために考案された、むかし野菜オリジナルの管理方法です。

隙間なくぴったりとおさまった白菜。この姿をイメージしながら植え付けること。

早いもので、今日から3月。一年のうち比較的緩やかな1・2月が終わり、本格的な春の到来とともに、また目まぐるしいシーズンがやってきます。
堆肥を撒いて土を作り、タネを蒔いて苗を植えこむ。草を取っては堆肥を作る。なんども繰り返されるサイクルの中で自然と共に、むかし野菜の邑はあり続けます。

次回は、自然野菜の価格についてお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。

麦とともに

今週は暖かい日が多く、大分でも春一番が吹き、すぐそこに春の気配を感じる一週間となりました。
菜の花が綺麗につぼみを膨らませ、春の到来をより一層強く感じるようになってきました。

春を握りしめた。お浸し、天ぷら、パスタにも。

大豆に継ぐ、むかし野菜の邑の穀類生産の要である、麦の生産に着手して数年が経ちました。

小麦・大麦・はだか麦・古代小麦と数種類の麦にチャレンジして確かな手応えを感じながら、新しい商品について喧々諤々の議論と試作、工夫を重ねています。
むかし野菜の邑が考える穀類生産には、一般的な栽培方法に必ずつきまとう「除草剤」と「化成肥料」は一切使用しません。草木堆肥のみで地力を高め、本当に安全で、本当に体に良い穀類の生産を行なっています。本来、大豆や小麦は体に良い食べ物の代表であるべきもので、それだけ栄養価も高いのですが、同時に強いアレルギー反応を起こす抗原の代表でもあります。
有史以来繰り返されてきた品種改良の負の側面が今、私たちの体を蝕んでしまっているように感じます。

人類の発展は、農耕とともにありました。
古代メソポタミア文明にもすでに「麦」の存在が確認されています。
以後、近代農業の発展に伴い、より多く。より病気に強く。より早く。より使いやすく。私たち人間の都合に合わせた品種改良が幾度となく繰り返されてきました。除草剤に耐性を持つようにDNAを操作して、より栽培管理が楽になるよう、遺伝子組換えを行なう時代になりました。
簡単に断定することはできませんが、このような近代農業のあり方に異を唱えるのが、私たちむかし野菜の邑です。

約2反、はだか麦が綺麗に出揃った。

-古代小麦

世界には、スペルト・エンマー・アインコーンと言われる古代小麦があり、グルテン不耐症や小麦アレルギーの方に効果があると言われています。
最近のグルテンフリーの流れで注目されている食材です。ネット上でもたくさんの記事を見ることができ、注目度は高いと言えます。

日本にも在来品種の麦があり、むかし野菜の邑ではその在来種「弥富」というもち麦を生産し、はだか麦と合わせ、ご飯に炊混ぜて炊き込む「麦ごはんセット」を作りました。プチプチとした食感と麦の香りがふわっと香る懐かしい味です。

薄い色の粒が「はだか麦」濃い方が「古代小麦」。

-野菜まんじゅう

小麦と古代小麦をブレンドした、むかし野菜の邑オリジナルの小麦全粒粉を使った商品として、「野菜まんじゅう」を作りました。
餡に使うのは、干し椎茸と季節の野菜をたっぷりと。もっちりしっかりとした生地から味わったことのない旨味と甘みが立ち上り、野菜の存在感が際立つ新商品が出来上がりました。お客様からも高い評価をいただいており、小麦を使った商品開発第1号が完成しました。

言葉や写真では伝えきれない魅力。一度食べてもらいたい。

-労力のカタマリ

除草剤も使わず、草木堆肥のみで生産するむかし野菜の穀類には多くの労力がかかります。
「麦ふみ」もその一つ。
根が強くなる、成長を促す酵素が出て、強く大きくなるなど理由はいくつもあるようですが、一歩一歩グシグシと踏みつけて歩く作業はため息が出るほど大変な作業です。収穫をイメージして強くなれ、大きくなれと強く踏みつけていきます。

「麦と姑は踏むが良い」という諺を見つけた。昔の人も麦ふみはしんどかったのか。

黄金色に輝く収穫前の麦畑の景色はどんな苦労もチャラにさせる美しさがある。

何をやっても
思うようにならない時
上にのびられない時に
根は育つんだから

と相田みつをも言っていました。
植物の強さに、自然界に働く力に、逆境こそ成長のチャンスだと。力強くあれ。と。

 

次回は、むかし野菜流の栽培管理についてお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。