生産者・消費者間のコミュニケーションについて考えてみる

農業者がただ農業者で良い時代はもう終わりました。

いいものを作るのは当然のことで、いかにその情報を正しく消費者へ届けることができるか。これからはマーケティングとコミュニケーションのスキルを身につけて戦っていかなければ大きな時代のうねりに飲み込まれてしまう。そんな不安定な大きな変化の時代に突入しました。

私達生産者は、ついついこちら側の「伝えたいこと」を、消費者が「知りたいこと」であると思いこみ、全力で商品説明をしてみたり、理念や考え方をぐいぐい伝えてしまうなど、コミュニケーションの罠に陥りがちです。とはいえ、頭では理解していても、簡単にはその罠から抜け出せないのが悩ましいところ。

毎週水曜日の直売では、常連のお客さんがつくようになってきた。毎週楽しみにしてくれている上に、直接会話できることがとてもうれしい。

伝えたいことは本当に山のようにあります。

草木堆肥・土作り・露地栽培・低窒素栽培など生産に関わる「労力」のこと。味・香り・歯切れが特徴のむかし野菜は、有機野菜とは全くの別物で、むかし食べたあの懐かしい「味」のこと。地域の活性化・自然循環農法の普及・むかしの健康だった「食文化の復活」のこと。あと10個ほどありますが、さてどうでしょう。いきなりこのようにガツガツと自己アピールを行い「私はこんな人間で、こんなに毎日頑張っていて、こんなにいいものを作っているんです。どうですか、すごいですよね。あの人とは違います。だから私と仲良くなりませんか?」と自己紹介をされたとしたら、まず間違いなく「仲良くなれそうにない」と感じるはずです。

大事なのは、相手が「何を知りたい」と思っているのか。

例えば、「何に悩んでいるのか」とか「毎日の生活の中で感じる不満はなにか」や「不備・不足・不満・不安」などの潜在的なニーズを知ることで、ひとりひとりに寄り添った答えを正しく提案すること。それこそがあるべきコミュニケーションのカタチではないでしょうか。

「子どもが、なかなか野菜を食べてくれない」という悩みがあれば、

「子どもの野菜嫌いの原因の大半が、いつまでも口の中に残る繊維」であること。「低チッ素の土壌で育つむかし野菜なら、スジがなく歯切れが良いので繊維が残らない」こと。「子どもの舌は本当に正直で、味・香りを本能で嗅ぎ分ける」ことをなど伝えることができます。

つまり、いつもスタート地点はマーケットであり、消費者であり、一人ひとりのお客様であるということ。

まずは、消費者との対話の中で「悩み」や「不満」といった欲求を探り当てることがコミュニケーションのなかで最も大切なポイントです。同時に最も難しいポイントでもあります。だからこそ、そこに今後の商品開発やサービス向上のヒントが隠されています。お客さまへのインタビューを行ったのも、進行中の商品開発の方向性と、新たなニーズを探るためでした。

4/21㈰ と 4/28㈰ むかし野菜の邑 農園体験会 を開催します。

体験型のレジャーへのニーズは高まっている。そのなかでも農園で遊んで、学べるというのは「食」に関心のある子育て世帯にはぴったりではないだろうか。

 

 

生産者が、ただ、野菜をつくっていればよかった時代はもう終わりました。ただただ愚直に消費者と向き合いマーケットで戦って行かなければなりません。資本力のある企業が農業のフィールドへ参入してきました。「価格と量」という競争力を武器にする彼らに対抗するには、「圧倒的な品質」と「細やかなサービス」「アイデアと機動力」による付加価値で、消費者を味方につける戦略をとるほかないと感じます。

簡単であはありませんが、やるだけの価値はあるはずです。
そのための「むかし野菜の邑」です。

関わる人すべてが幸せになって、明日や未来への不安がなくなるような明るい地域、農業の活性化を目指します。

 

次回は、農園体験会についてのお知らせと、目的などお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。

 

 

出荷日の一日

畑から食卓へ届くまでの間には、いくつもの工程がありそれは大変な労力がかかります。むかし野菜の邑では毎週、月・水・金曜日に出荷作業を行なっており、その日の一日は朝から怒涛の忙しさとなります。

 

白菜・小松菜・人参・じゃがいも・大根・紫大根・紅芯大根・セロリ・九条ネギ・サラダセット・レタス・ブロッコリー・椎茸・サラダかぶ・菜の花・漬物・わかめ・ほうれん草。この種類の野菜をそれぞれ必要な数に作り分け、個別にダンボールへと梱包されていきます。箱を開けた瞬間に、「わ!」と喜んでもらえるよう、土を落とし、傷んだ葉っぱを取り除いて、キレイに洗っては水気を切って個別に袋詰めをしています。

出荷日の朝は忙しい。続々と畑から集まってくる野菜たち。

例えば人参。草木堆肥しか使わない自然循環農法の野菜ですので、実に不揃いで、どれも2本づつといった具合に簡単には振り分けられません。均等にどなたにも平等に振り分けるには、相応のバランス感覚が必要になります。また、一週間ごとに畑の状況はめまぐるしく移り変わっていきますので、収穫するのにも優先順位が常に移り変わります。畑の状況・野菜の状態・お客様の要望を踏まえながら、その時の状況に応じた臨機応変な対応が求められ、いつも頭を悩ませています。

袋詰めは単純ではない。観察力とバランス感覚が求められる。これがまた難しい。

収穫・掃除・水洗い・袋詰めがひと段落し、昼食の時間になるのは決まって13時を過ぎる事に。ホッと一息するのもつかの間、誰もが次の仕事に急いで取り掛かります。まだまだ仕事は残っています。定期購入のお客様は、お気づきかもしれませんがむかし野菜の邑では、ダンボール箱や包装に極力コストを掛けず、お客様の負担にならないようにと努めています。あちこちからかき集めたダンボールを再利用して頑張っています。

15時過ぎ、箱詰めの準備が整い始める。

箱いっぱいのむかし野菜。たくさんの食卓を明るくしてほしい。

 

これから、半日から一日を掛けて全国を巡ってゆくむかし野菜。それぞれの食卓の数だけ家族の健康と笑顔を願う私たちの気持ちと一緒に、今日も「美味しい」の一言を届けています。

次回は、生産者、消費者のコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
では、また次の金曜日に。

春と端境期

「苗半作」という言葉があります。
丈夫で良い苗を作れば、もう仕事は半分できたものと同じという意味です。
それだけに育苗には大変な時間と労力が必要です。

今、ピーマン・トマト・なす・胡瓜などの夏野菜の苗作りが急ピッチで進んでいます。
みなさんに美味しい露地栽培のむかし野菜をお届けするために、一番大切な仕事です。

丈夫で元気な苗を作ることができれば、あとは大丈夫。ただし、それがどれだけ難しいことか…

 

今週は、天気が良く晴れたものの、風が強く冷たい風が吹きました。
寒の戻りというやつでしょうか。この晴れ間をチャンスと、滞っていた堆肥作り、庄内の麦踏みなどバタバタと畑仕事を終わらせていきました。ごぼうのタネを蒔き、ジャガイモを植える。空いた畑へ堆肥を入れて次の作付けの準備をする。ブロッコリーの草を取り、土を寄せる。雨つづきで出来なかった仕事が今週は捗りました。

収穫を終えた菜の花。トラクターで漉き込み、堆肥とともに微生物の餌として畑を肥沃に変えてくれる。

 

季節は進む

季節が進み、足早に春がやってきています。路地には小さな花がたくさん咲き、ウグイスの鳴声を聞きました。「あぁ、春ですね。ちょっと一休み。」とはいかないのが畑仕事。畑に春がやってくる、それはつまり、ほどんどの野菜に花が咲き、出荷できる状態ではなくなるということ。

「トウ立ち」と言い、植物として自然な生理現象です。子孫を残すためにエネルギーの流れを葉や茎から、花とタネへシフトさせていきます。
風に煽られても簡単に倒れてしまわないように硬い筋で身を守り、蓄えた養分を花とタネへ回します。もっとも、草木堆肥・低チッ素での栽培であれば硬くなりにくいのが、むかし野菜の特徴でもあります。

大根・ネギ・レタス・人参・カブ・水菜・青梗菜・小松菜・白菜・キャベツ。
冬を越えて春を迎えるほとんどの野菜は「トウ立ち」する仕組みになっています。気温や日照時間の変化を敏感に感じ取っていて、一分の狂いもなく花を咲かせる野菜たちを見て、何万年もかけて作り上げられた自然のサイクルに思いを馳せます。

青梗菜も上に上に伸びようとしている。

サラダ小松菜の蕾。これも菜の花として食べられる。

水菜も「アブラナ科」例外なく花が咲く。

赤い大根「もみじスティック」もこの状態。

聖護院大根はごらんのとおり。

 

端境期

こうやって春を迎えた野菜たちが一斉に花となって商品がなくなっていきます。これから夏野菜を収穫することができるまでポッカリと空白期間が出来てしまいます。これを「端境期-はざかいき」といい、むかし野菜の邑ではあの手この手で工夫を凝らし端境期を作らないように努力を重ねています。

毎週の野菜を楽しみにしてくださるお客様が目の前に居る。決して野菜を途切れさせるわけにはいきません。
種まきのタイミングを調整する。作付けの量を増やす。年間100以上の野菜を回転させる。加工品や海産物で商品のバリエーションを確保する。

まだまだやれることはあると思いますが、自然の力には抗うことはできません。最善を尽くし、精一杯できることをやっていきます。

次回は、野菜が出荷されるまで。出荷日の一日をお伝えしたいと思います。
では、また次の金曜日に。