自然の中で

むかし野菜流 密集栽培のススメ

草木、萌え動く3月。
毎年甘酸っぱい実をつけるブルーベリーも、季節の移り変わりを敏感に感じています。
今年も、たくさんの実をつけてくれそう。

今年も甘い実が沢山つくといい。

むかし野菜の邑には、狭い面積の畑を、いかに有効に使い収量と品質、その両面を担保しながら面積あたりの収入を高い水準で確保してゆく様々なノウハウがあります。密集栽培はその一つ。マルチを使うことなく、苗1本でも多く植え付けることができるようにと常に考え続けることで、1反当たり350万円(年)という、超高収益栽培が可能になるのです。これは露地栽培、しかも自然栽培という条件では驚くべきことです。

むかし野菜流の密集栽培は畑を作り、畝を立てるところから始まります。

2月からの研修生に鍬の使い方を教える。初めて鍬を握った日のことを思い出した。

畝下は、鍬1本分のスペースしかなく、正直歩きにくいです。慣れるまでは綱渡りのように左右のバランスを取りながら転けないように歩くことになりますが、草が生えるだけで、何も生まない畝下のスペースはムダそのもの。レーキをかける際も、1本でも2本でも多く植え付けることができるように、有効な面積を確保しながら、土の偏りを無くすように慎重に行っていきます。

定植後のキャベツ。3本づつを少しずらしながら植えることで最大限活用する。マルチを使わないのは有効な面積が減ることに加え、毎回大量のゴミが出てしまうから。

タネの蒔き方で収量が決まります。

大根・ごぼう・人参・小松菜・サラダセット・中カブ・サラダカブ・それぞれ品目ごとにタネの蒔き方が違います。「収穫時のサイズ・葉の大きさがどのくらいになるのか」「春・夏・秋・冬の成長速度」「経験と勘」いくつもの条件を頭に入れ、「梅雨にかかる時期なら、蒸れてしまうので少し薄めに」とか「ごぼうは葉っぱが巨大になるので近すぎると悪い」とか、実にたくさんのことを同時に考えながら作業を進めて行きます。

サラダカブのタネ。密集しすぎないように、少なすぎないように。こればかりは感覚で覚えるほかにない。

収穫もむかし野菜流

大きなものを穫れば、その空いた隙間を利用して2番手、3番手が大きくなってくれる。1つの畝で、長ければ4週間ほど収穫できる。

密集栽培では、作物自身に備わっている競争本能を利用することで、競い合いながら互いの成長を助け合うという利点もあります。また『規格サイズ』や『見栄え』に影響されないむかし野菜ですので間引きの方法が通常の逆になります。基本的な間引きは、小さく規格サイズに満たないものを狙って行います。そうすることで均一にサイズが揃い、収穫期になると一斉に収穫・出荷をすることが可能になるためです。
むかし野菜流では、一番成長が早く大きくなったものから収穫し、続いて2番手、3番手の成長を待って収穫する。といった具合に出来るだけ長く収穫することができるように調整しています。個別配送ですので、ご家庭で食べる野菜が無くなってしまわないようにと、露地栽培でありながら端境期を作らないために考案された、むかし野菜オリジナルの管理方法です。

隙間なくぴったりとおさまった白菜。この姿をイメージしながら植え付けること。

早いもので、今日から3月。一年のうち比較的緩やかな1・2月が終わり、本格的な春の到来とともに、また目まぐるしいシーズンがやってきます。
堆肥を撒いて土を作り、タネを蒔いて苗を植えこむ。草を取っては堆肥を作る。なんども繰り返されるサイクルの中で自然と共に、むかし野菜の邑はあり続けます。

次回は、自然野菜の価格についてお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。

麦とともに

今週は暖かい日が多く、大分でも春一番が吹き、すぐそこに春の気配を感じる一週間となりました。
菜の花が綺麗につぼみを膨らませ、春の到来をより一層強く感じるようになってきました。

春を握りしめた。お浸し、天ぷら、パスタにも。

大豆に継ぐ、むかし野菜の邑の穀類生産の要である、麦の生産に着手して数年が経ちました。

小麦・大麦・はだか麦・古代小麦と数種類の麦にチャレンジして確かな手応えを感じながら、新しい商品について喧々諤々の議論と試作、工夫を重ねています。
むかし野菜の邑が考える穀類生産には、一般的な栽培方法に必ずつきまとう「除草剤」と「化成肥料」は一切使用しません。草木堆肥のみで地力を高め、本当に安全で、本当に体に良い穀類の生産を行なっています。本来、大豆や小麦は体に良い食べ物の代表であるべきもので、それだけ栄養価も高いのですが、同時に強いアレルギー反応を起こす抗原の代表でもあります。
有史以来繰り返されてきた品種改良の負の側面が今、私たちの体を蝕んでしまっているように感じます。

人類の発展は、農耕とともにありました。
古代メソポタミア文明にもすでに「麦」の存在が確認されています。
以後、近代農業の発展に伴い、より多く。より病気に強く。より早く。より使いやすく。私たち人間の都合に合わせた品種改良が幾度となく繰り返されてきました。除草剤に耐性を持つようにDNAを操作して、より栽培管理が楽になるよう、遺伝子組換えを行なう時代になりました。
簡単に断定することはできませんが、このような近代農業のあり方に異を唱えるのが、私たちむかし野菜の邑です。

約2反、はだか麦が綺麗に出揃った。

-古代小麦

世界には、スペルト・エンマー・アインコーンと言われる古代小麦があり、グルテン不耐症や小麦アレルギーの方に効果があると言われています。
最近のグルテンフリーの流れで注目されている食材です。ネット上でもたくさんの記事を見ることができ、注目度は高いと言えます。

日本にも在来品種の麦があり、むかし野菜の邑ではその在来種「弥富」というもち麦を生産し、はだか麦と合わせ、ご飯に炊混ぜて炊き込む「麦ごはんセット」を作りました。プチプチとした食感と麦の香りがふわっと香る懐かしい味です。

薄い色の粒が「はだか麦」濃い方が「古代小麦」。

-野菜まんじゅう

小麦と古代小麦をブレンドした、むかし野菜の邑オリジナルの小麦全粒粉を使った商品として、「野菜まんじゅう」を作りました。
餡に使うのは、干し椎茸と季節の野菜をたっぷりと。もっちりしっかりとした生地から味わったことのない旨味と甘みが立ち上り、野菜の存在感が際立つ新商品が出来上がりました。お客様からも高い評価をいただいており、小麦を使った商品開発第1号が完成しました。

言葉や写真では伝えきれない魅力。一度食べてもらいたい。

-労力のカタマリ

除草剤も使わず、草木堆肥のみで生産するむかし野菜の穀類には多くの労力がかかります。
「麦ふみ」もその一つ。
根が強くなる、成長を促す酵素が出て、強く大きくなるなど理由はいくつもあるようですが、一歩一歩グシグシと踏みつけて歩く作業はため息が出るほど大変な作業です。収穫をイメージして強くなれ、大きくなれと強く踏みつけていきます。

「麦と姑は踏むが良い」という諺を見つけた。昔の人も麦ふみはしんどかったのか。

黄金色に輝く収穫前の麦畑の景色はどんな苦労もチャラにさせる美しさがある。

何をやっても
思うようにならない時
上にのびられない時に
根は育つんだから

と相田みつをも言っていました。
植物の強さに、自然界に働く力に、逆境こそ成長のチャンスだと。力強くあれ。と。

 

次回は、むかし野菜流の栽培管理についてお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。

山と森、自然のサイクルを理解する。

大分にも雪が降り、束の間の雪景色となりました。
翌日には解けて元の景色にもとどおり。

5、6番の畑。午前中は強く吹雪いたが、午後になると晴れ間が見えほんの一瞬だけ冬らしい表情に。

むかし野菜をむかし野菜足らしめるもの、
それは紛れもなく「草木堆肥」です。その「草木堆肥」のことをどれだけ知っていますか?何が入っていて、なぜいいのか。今日はそんな「草木堆肥」のことをお伝えします。

読んで字のごとく「草」と「木」を主な原料とする肥料(肥料といっても窒素分は極端に少ない。)のことで、他の有機農法と大きく異なる部分です。種々雑多な草や木を混ぜ合わせるため、無限に近い微生物と菌が活発に生きています。初めは混沌とした中、微生物たちの活動も自然と均衡が保たれ、特定の菌が一人勝ちする事はありません。まさに自然のサイクルです。

農園で開催する体験イベントでは、「堆肥づくり」が一番盛り上がる。

「草」

まずは堆肥の原料を調達することから始まります。
草を刈り取り、それを軽トラックに積み込む。時折、造園業者から河川敷などの整備をした後の草が持ち込まれるので助かっています。ススキや茅、道端の草、畑の畔、などどんな草でも様々な微生物や菌が付着していますので良質な原料となります。

「木」

造園会社から、街路樹の剪定枝が大量に持ち込まれます。このままでは使えませんので、破砕機にかけ粉々にしたのち、葉と小枝とに選り分ける必要があります。
木は地中深くに根を張りたくさんのミネラル分、と微量な元素を枝葉に取り込むため、野菜にとって必要な栄養素を補給することができます。

「牛糞」

発酵を促す目的と、肥料として最低限必要な窒素分を補給するため全体の一割ほど混ぜ合わせます。抗生物質を多く含む配合飼料を与えないこと。乳牛であること。(品質の保持のため常に牛舎を清潔にしておかなければならない)といった条件をクリアする酪農家を現地に赴きしっかりと選んでいます。

この原料を元に、堆肥作りを行なっていきます。

  1. 草を約半反ほどの広さ(一回分)に均等に広げていきます。草の塊があちこちにあるままだと、発酵がうまく進まずに腐敗してしまいます。一番重要、かつ最もハードな作業です。
  2. 草の上に牛糞・葉や破砕屑の順で3層に重ねます。やはりムラなく均等に広げるのがコツです。
  3. トラクターでしっかり混ぜ合わせ、タイヤショベルで高さ2メートルまで積み上げる。ビニールをかけ1〜3ヶ月(夏場で1.5月)寝かせる。その間数回切り返しを行いようやく完成です。
  4. 完成した堆肥は、嫌な匂いがありません。深い森の中、カブトムシを取りに行った子供の頃の記憶が蘇ってくる。そんないい匂いがします。

真夏の堆肥作りは、過酷そのもの。これもむかし野菜のため。

今でこそ機械の助けがある。それでも畑が増え、穀類生産もとなると慢性的に堆肥が足りない。

持ち込まれる剪定枝。ミネラル、微生物、放線菌の宝庫。

大型の機械を使い、枝を粉々に砕く。

数え切れないほどの微生物と放線菌の住みかとなる。彼らが土を耕し、豊かな金の土を作ってくれる。

毎月1〜2回、この堆肥作りを行い全ての畑へ、繰り返し繰り返し投入していきます。今では、このように自ら堆肥を作る生産者がいなくなってしまいました。単純で簡単な化成肥料を使い、手っ取り早く収穫高を上げることが、農業の在り方として主流になり、矛盾を感じることなく消費されています。有機農業の現場でも、大手メーカーから購入した有機肥料で作物を育てているのが現状です。

事実、あまりにも多くの労力と時間、手間がかかります。その対価としてどれだけの理解と評価が得られるのでしょうか。まだまだ伝えたい事ばかりですが、またの機会にお伝えできればと思います。

次回は、加工品の中でも人気の高いお漬物についてお話しします。
ではまた次の金曜日に。