自然の中で

麦とともに

今週は暖かい日が多く、大分でも春一番が吹き、すぐそこに春の気配を感じる一週間となりました。
菜の花が綺麗につぼみを膨らませ、春の到来をより一層強く感じるようになってきました。

春を握りしめた。お浸し、天ぷら、パスタにも。

大豆に継ぐ、むかし野菜の邑の穀類生産の要である、麦の生産に着手して数年が経ちました。

小麦・大麦・はだか麦・古代小麦と数種類の麦にチャレンジして確かな手応えを感じながら、新しい商品について喧々諤々の議論と試作、工夫を重ねています。
むかし野菜の邑が考える穀類生産には、一般的な栽培方法に必ずつきまとう「除草剤」と「化成肥料」は一切使用しません。草木堆肥のみで地力を高め、本当に安全で、本当に体に良い穀類の生産を行なっています。本来、大豆や小麦は体に良い食べ物の代表であるべきもので、それだけ栄養価も高いのですが、同時に強いアレルギー反応を起こす抗原の代表でもあります。
有史以来繰り返されてきた品種改良の負の側面が今、私たちの体を蝕んでしまっているように感じます。

人類の発展は、農耕とともにありました。
古代メソポタミア文明にもすでに「麦」の存在が確認されています。
以後、近代農業の発展に伴い、より多く。より病気に強く。より早く。より使いやすく。私たち人間の都合に合わせた品種改良が幾度となく繰り返されてきました。除草剤に耐性を持つようにDNAを操作して、より栽培管理が楽になるよう、遺伝子組換えを行なう時代になりました。
簡単に断定することはできませんが、このような近代農業のあり方に異を唱えるのが、私たちむかし野菜の邑です。

約2反、はだか麦が綺麗に出揃った。

-古代小麦

世界には、スペルト・エンマー・アインコーンと言われる古代小麦があり、グルテン不耐症や小麦アレルギーの方に効果があると言われています。
最近のグルテンフリーの流れで注目されている食材です。ネット上でもたくさんの記事を見ることができ、注目度は高いと言えます。

日本にも在来品種の麦があり、むかし野菜の邑ではその在来種「弥富」というもち麦を生産し、はだか麦と合わせ、ご飯に炊混ぜて炊き込む「麦ごはんセット」を作りました。プチプチとした食感と麦の香りがふわっと香る懐かしい味です。

薄い色の粒が「はだか麦」濃い方が「古代小麦」。

-野菜まんじゅう

小麦と古代小麦をブレンドした、むかし野菜の邑オリジナルの小麦全粒粉を使った商品として、「野菜まんじゅう」を作りました。
餡に使うのは、干し椎茸と季節の野菜をたっぷりと。もっちりしっかりとした生地から味わったことのない旨味と甘みが立ち上り、野菜の存在感が際立つ新商品が出来上がりました。お客様からも高い評価をいただいており、小麦を使った商品開発第1号が完成しました。

言葉や写真では伝えきれない魅力。一度食べてもらいたい。

-労力のカタマリ

除草剤も使わず、草木堆肥のみで生産するむかし野菜の穀類には多くの労力がかかります。
「麦ふみ」もその一つ。
根が強くなる、成長を促す酵素が出て、強く大きくなるなど理由はいくつもあるようですが、一歩一歩グシグシと踏みつけて歩く作業はため息が出るほど大変な作業です。収穫をイメージして強くなれ、大きくなれと強く踏みつけていきます。

「麦と姑は踏むが良い」という諺を見つけた。昔の人も麦ふみはしんどかったのか。

黄金色に輝く収穫前の麦畑の景色はどんな苦労もチャラにさせる美しさがある。

何をやっても
思うようにならない時
上にのびられない時に
根は育つんだから

と相田みつをも言っていました。
植物の強さに、自然界に働く力に、逆境こそ成長のチャンスだと。力強くあれ。と。

 

次回は、むかし野菜流の栽培管理についてお話ししたいと思います。
では、また次の金曜日に。

山と森、自然のサイクルを理解する。

大分にも雪が降り、束の間の雪景色となりました。
翌日には解けて元の景色にもとどおり。

5、6番の畑。午前中は強く吹雪いたが、午後になると晴れ間が見えほんの一瞬だけ冬らしい表情に。

むかし野菜をむかし野菜足らしめるもの、
それは紛れもなく「草木堆肥」です。その「草木堆肥」のことをどれだけ知っていますか?何が入っていて、なぜいいのか。今日はそんな「草木堆肥」のことをお伝えします。

読んで字のごとく「草」と「木」を主な原料とする肥料(肥料といっても窒素分は極端に少ない。)のことで、他の有機農法と大きく異なる部分です。種々雑多な草や木を混ぜ合わせるため、無限に近い微生物と菌が活発に生きています。初めは混沌とした中、微生物たちの活動も自然と均衡が保たれ、特定の菌が一人勝ちする事はありません。まさに自然のサイクルです。

農園で開催する体験イベントでは、「堆肥づくり」が一番盛り上がる。

「草」

まずは堆肥の原料を調達することから始まります。
草を刈り取り、それを軽トラックに積み込む。時折、造園業者から河川敷などの整備をした後の草が持ち込まれるので助かっています。ススキや茅、道端の草、畑の畔、などどんな草でも様々な微生物や菌が付着していますので良質な原料となります。

「木」

造園会社から、街路樹の剪定枝が大量に持ち込まれます。このままでは使えませんので、破砕機にかけ粉々にしたのち、葉と小枝とに選り分ける必要があります。
木は地中深くに根を張りたくさんのミネラル分、と微量な元素を枝葉に取り込むため、野菜にとって必要な栄養素を補給することができます。

「牛糞」

発酵を促す目的と、肥料として最低限必要な窒素分を補給するため全体の一割ほど混ぜ合わせます。抗生物質を多く含む配合飼料を与えないこと。乳牛であること。(品質の保持のため常に牛舎を清潔にしておかなければならない)といった条件をクリアする酪農家を現地に赴きしっかりと選んでいます。

この原料を元に、堆肥作りを行なっていきます。

  1. 草を約半反ほどの広さ(一回分)に均等に広げていきます。草の塊があちこちにあるままだと、発酵がうまく進まずに腐敗してしまいます。一番重要、かつ最もハードな作業です。
  2. 草の上に牛糞・葉や破砕屑の順で3層に重ねます。やはりムラなく均等に広げるのがコツです。
  3. トラクターでしっかり混ぜ合わせ、タイヤショベルで高さ2メートルまで積み上げる。ビニールをかけ1〜3ヶ月(夏場で1.5月)寝かせる。その間数回切り返しを行いようやく完成です。
  4. 完成した堆肥は、嫌な匂いがありません。深い森の中、カブトムシを取りに行った子供の頃の記憶が蘇ってくる。そんないい匂いがします。

真夏の堆肥作りは、過酷そのもの。これもむかし野菜のため。

今でこそ機械の助けがある。それでも畑が増え、穀類生産もとなると慢性的に堆肥が足りない。

持ち込まれる剪定枝。ミネラル、微生物、放線菌の宝庫。

大型の機械を使い、枝を粉々に砕く。

数え切れないほどの微生物と放線菌の住みかとなる。彼らが土を耕し、豊かな金の土を作ってくれる。

毎月1〜2回、この堆肥作りを行い全ての畑へ、繰り返し繰り返し投入していきます。今では、このように自ら堆肥を作る生産者がいなくなってしまいました。単純で簡単な化成肥料を使い、手っ取り早く収穫高を上げることが、農業の在り方として主流になり、矛盾を感じることなく消費されています。有機農業の現場でも、大手メーカーから購入した有機肥料で作物を育てているのが現状です。

事実、あまりにも多くの労力と時間、手間がかかります。その対価としてどれだけの理解と評価が得られるのでしょうか。まだまだ伝えたい事ばかりですが、またの機会にお伝えできればと思います。

次回は、加工品の中でも人気の高いお漬物についてお話しします。
ではまた次の金曜日に。

 

金の土、銀の土

作物を美味しく育てるためにまず何が必要だと思いますか?

いろいろと考えを巡らせてゆくと最後はやはり「土」にたどり着くのでは無いでしょうか。「土」こそが美味しく、健康な野菜を生み出す源である。これは真実です。土が健全で、健康でなければどうやって真の美味しさと栄養価をもつ野菜が栽培できるでしょう。

では、その「土」がどういう状態で、どのように影響して、美味しく健康な野菜を育てるのでしょうか。「良い土」にはどんな特徴があるのでしょうか。むかし野菜の邑の畑を例に紹介していきたいと思います。
むかし野菜の邑には「土」の状態に応じて3つのランクがあり、「金 銀 赤」 と順に、草木堆肥を施してきた年数に応じて土の状態と、生産できる野菜とその味に大きな差が生まれます。


「赤ラベル」
草木堆肥歴3年未満の畑。土は硬く、栄養価やミネラル分、微生物の数も少ない。

1年目に漬物用にと高菜を植えてみたが、成長する前に花芽をつけてしまった。野菜は正直で残酷だ。

新しく借り受けることになり、これから土作りを行っていく初期段階。
以前の耕作者がどのような方法で管理してきたかで、出足が随分と違います。化成肥料や除草剤などの化学物質を使っていた場合は、土の目が細かくがっしりと固まり重たい土になっています。このような土壌では水はけも悪く、地表面に肥料成分が残っているため、野菜の根は深くまで張ることはありません。どの作物も驚くほどに成長せずに、出荷できないままトラクターで漉き込むことになります。
草を取るにも、土が硬く鎌を持つ手もすぐに痺れてくる上に、しつこい種類の草ばかりでとても時間がかかります。
味は薄く、深み・旨味がまだまだ。筋っぽさも残りむかし野菜として納得できるまでには、まだ時間がかかります。
小松菜や青梗菜などの葉物野菜で畑を回転させて、土作りを続けることで、2年目以降は、土の感触や草の種類、野菜の生育に大きな違いが生まれてきます。

「銀ラベル」
草木堆肥歴5年未満の畑。土の団粒化が進み大きな変化が現れ始める。

レーキで畝を平らに慣らす。土が軽くなり、楽になるまで最低で3年。

3年が経過すると、土が柔らかくなり、粒状になっているのが確認できます。(団粒構造)これによって、粒の間に空気と水を蓄えることができるようになり、水はけがよく、作物の根が張りやすいふかふかとした土へと変わっていきます。この頃になると、草取りや鍬・レーキを使った畑仕事の際に土の軽さが変わってきたことを実感できるようになります。葉物野菜の味も合格点をもらえるまでに。ブロッコリー・ズッキーニ・ゴーヤなど地中にしっかりと根を下ろす作物の栽培ができるようになり、葉物野菜以外にもレタス、じゃがいも漬物用のたかなや大根などに挑戦できるようになります。
甘みが乗ってきてむかし野菜の特徴である香りも感じられるようになってくるのもこの頃から。商品として自信を持ってお届けできるのもこの「銀ラベル」からです。

「金ラベル」
草木堆肥歴5年以上の畑。まさに金の土。
味・香り・歯切れ、その存在感は桁違いです。

金ラベルの人参は最高の香り。もちろん葉っぱまで食べられる。

キャベツが結球(葉を巻き込みながら成長すること)するためには、土の力が不可欠。

この頃になると、なにを育ててもしっかりと旨味のある、深い味わいの野菜ができます。鍬を扱う仕事も本当に楽で、リズムよく畝上げができるので、気持ちよく楽しいほど。土の団粒も深さ20cm以上になり、ナスやピーマン・トマト等の実物は、より深くまで根をおろすことと、収穫期間が長いため土の力が無いとすぐに枯れてしまいます。また、人参、セロリなどは、はっきりと差が現れるので、「金ラベル」に達するまでは栽培しません。
今の時代、時間と手間と労力のかかりすぎるこの農法を生産者はもういません。それを評価する消費者の数が減っていることにもその一因はありそうです。

かつての日本では、当たり前だった自然循環農法を、復活させる為のカギは「草木堆肥のみを使用した地道な土作り」にあると思います。

ここにたどり着くまでには、長い時間をかけた実験と失敗の数々がありました。昔ながらの土作りで、小さかった頃に食べたあの懐かしい味と香り。代表の努力と汗、涙がここに結実しています。※佐藤自然農園のブログにて代表佐藤の思いを綴っています。

次回は、金の土の源であり、むかし野菜に最も重要な「草木堆肥」についてお話しします。ではまた次の金曜日に。