畑仕事

身体が喜ぶ、乳酸菌の力

2月になり節分、立春と暦は進んで行きますが、朝晩はまだ寒い大分です。
ですが、例年に比べるとやはり暖かく、春めいてくるのもすぐのような気がします。

火曜日に堆肥を作った。これだけあっても4月からの夏野菜に向けてはまだ足りない。

お漬物が毎日の食卓から姿を消したのは、いつからだろう。
質素倹約が美徳だという考えはいささか古いですが、それでも食卓に、白いご飯と、味噌汁、そしておいしいお漬物があればホッと安心できるのが日本人である証拠でしょう。この感覚は誰もが共感できるはず。

むかし野菜の邑のテーマの一つに「健康で安全な昔ながらの食文化の再提案」があります。その中でも特に力を入れているのが、保存料・化学調味料無添加 本物の発酵食品である「お漬物」です。
むかし野菜の邑で作るお漬物は、塩や粕といった基本の調味料以外は使用しません。たとえば、昆布やかつお節などを加えて、旨味成分付け足すことはしません。
瓜や高菜、セロリなどの野菜が持つ本来の旨味と、それをよりいっそう引き出す乳酸菌の力だけで勝負して、本当に美味しいお漬物を作りたい。その思いからです。もっとも、むかし野菜であるからこそ野菜から深い旨味が出るのです。

左から「瓜の粕漬け」「柚子大根」「セロリの粕漬け」「茄子の粕漬け」 うまい漬物があれば、めしも旨いし、酒にも合う。

いくつもの工程を経て、美味しい高菜漬けができる。

たくあんの用意も始まった。

今では、瓜・茄子・人参・セロリを粕漬けに。
大根の甘酢漬け・柚子大根・たくあん。
大分高菜・茄子の辛子漬け・シソの実の味噌漬け。
と10種類ほどのお漬物を製造し、お届けしています。

そのどれもが、皆様からとても良い評価をいただいていて、私たち自身も素直に「うまい」と思えるものです。「主人が一人で食べてしまうので、こっそり隠してます。」「子どもが大好きで、私たちの分がありません。」などなど、感想をいただくことがありますが、本当にありがたく、その言葉に励まされています。

日本全国に目を向けてみれば、美味しいお漬物がたくさんあります。今後はそれをヒントにむかし野菜の邑らしい、シンプルで深みのある美味しいお漬物を新しく提案していくのも面白いかもしれません。

健康で、豊かだった頃の食文化をもう一度取り戻したい。そのためにまた明日から頑張ります。

次回は、むかし野菜の邑が採用する、グループの運営方法「結いの制度」についてお話ししたいと思います。では、また次の金曜日に。

山と森、自然のサイクルを理解する。

大分にも雪が降り、束の間の雪景色となりました。
翌日には解けて元の景色にもとどおり。

5、6番の畑。午前中は強く吹雪いたが、午後になると晴れ間が見えほんの一瞬だけ冬らしい表情に。

むかし野菜をむかし野菜足らしめるもの、
それは紛れもなく「草木堆肥」です。その「草木堆肥」のことをどれだけ知っていますか?何が入っていて、なぜいいのか。今日はそんな「草木堆肥」のことをお伝えします。

読んで字のごとく「草」と「木」を主な原料とする肥料(肥料といっても窒素分は極端に少ない。)のことで、他の有機農法と大きく異なる部分です。種々雑多な草や木を混ぜ合わせるため、無限に近い微生物と菌が活発に生きています。初めは混沌とした中、微生物たちの活動も自然と均衡が保たれ、特定の菌が一人勝ちする事はありません。まさに自然のサイクルです。

農園で開催する体験イベントでは、「堆肥づくり」が一番盛り上がる。

「草」

まずは堆肥の原料を調達することから始まります。
草を刈り取り、それを軽トラックに積み込む。時折、造園業者から河川敷などの整備をした後の草が持ち込まれるので助かっています。ススキや茅、道端の草、畑の畔、などどんな草でも様々な微生物や菌が付着していますので良質な原料となります。

「木」

造園会社から、街路樹の剪定枝が大量に持ち込まれます。このままでは使えませんので、破砕機にかけ粉々にしたのち、葉と小枝とに選り分ける必要があります。
木は地中深くに根を張りたくさんのミネラル分、と微量な元素を枝葉に取り込むため、野菜にとって必要な栄養素を補給することができます。

「牛糞」

発酵を促す目的と、肥料として最低限必要な窒素分を補給するため全体の一割ほど混ぜ合わせます。抗生物質を多く含む配合飼料を与えないこと。乳牛であること。(品質の保持のため常に牛舎を清潔にしておかなければならない)といった条件をクリアする酪農家を現地に赴きしっかりと選んでいます。

この原料を元に、堆肥作りを行なっていきます。

  1. 草を約半反ほどの広さ(一回分)に均等に広げていきます。草の塊があちこちにあるままだと、発酵がうまく進まずに腐敗してしまいます。一番重要、かつ最もハードな作業です。
  2. 草の上に牛糞・葉や破砕屑の順で3層に重ねます。やはりムラなく均等に広げるのがコツです。
  3. トラクターでしっかり混ぜ合わせ、タイヤショベルで高さ2メートルまで積み上げる。ビニールをかけ1〜3ヶ月(夏場で1.5月)寝かせる。その間数回切り返しを行いようやく完成です。
  4. 完成した堆肥は、嫌な匂いがありません。深い森の中、カブトムシを取りに行った子供の頃の記憶が蘇ってくる。そんないい匂いがします。

真夏の堆肥作りは、過酷そのもの。これもむかし野菜のため。

今でこそ機械の助けがある。それでも畑が増え、穀類生産もとなると慢性的に堆肥が足りない。

持ち込まれる剪定枝。ミネラル、微生物、放線菌の宝庫。

大型の機械を使い、枝を粉々に砕く。

数え切れないほどの微生物と放線菌の住みかとなる。彼らが土を耕し、豊かな金の土を作ってくれる。

毎月1〜2回、この堆肥作りを行い全ての畑へ、繰り返し繰り返し投入していきます。今では、このように自ら堆肥を作る生産者がいなくなってしまいました。単純で簡単な化成肥料を使い、手っ取り早く収穫高を上げることが、農業の在り方として主流になり、矛盾を感じることなく消費されています。有機農業の現場でも、大手メーカーから購入した有機肥料で作物を育てているのが現状です。

事実、あまりにも多くの労力と時間、手間がかかります。その対価としてどれだけの理解と評価が得られるのでしょうか。まだまだ伝えたい事ばかりですが、またの機会にお伝えできればと思います。

次回は、加工品の中でも人気の高いお漬物についてお話しします。
ではまた次の金曜日に。

 

金の土、銀の土

作物を美味しく育てるためにまず何が必要だと思いますか?

いろいろと考えを巡らせてゆくと最後はやはり「土」にたどり着くのでは無いでしょうか。「土」こそが美味しく、健康な野菜を生み出す源である。これは真実です。土が健全で、健康でなければどうやって真の美味しさと栄養価をもつ野菜が栽培できるでしょう。

では、その「土」がどういう状態で、どのように影響して、美味しく健康な野菜を育てるのでしょうか。「良い土」にはどんな特徴があるのでしょうか。むかし野菜の邑の畑を例に紹介していきたいと思います。
むかし野菜の邑には「土」の状態に応じて3つのランクがあり、「金 銀 赤」 と順に、草木堆肥を施してきた年数に応じて土の状態と、生産できる野菜とその味に大きな差が生まれます。


「赤ラベル」
草木堆肥歴3年未満の畑。土は硬く、栄養価やミネラル分、微生物の数も少ない。

1年目に漬物用にと高菜を植えてみたが、成長する前に花芽をつけてしまった。野菜は正直で残酷だ。

新しく借り受けることになり、これから土作りを行っていく初期段階。
以前の耕作者がどのような方法で管理してきたかで、出足が随分と違います。化成肥料や除草剤などの化学物質を使っていた場合は、土の目が細かくがっしりと固まり重たい土になっています。このような土壌では水はけも悪く、地表面に肥料成分が残っているため、野菜の根は深くまで張ることはありません。どの作物も驚くほどに成長せずに、出荷できないままトラクターで漉き込むことになります。
草を取るにも、土が硬く鎌を持つ手もすぐに痺れてくる上に、しつこい種類の草ばかりでとても時間がかかります。
味は薄く、深み・旨味がまだまだ。筋っぽさも残りむかし野菜として納得できるまでには、まだ時間がかかります。
小松菜や青梗菜などの葉物野菜で畑を回転させて、土作りを続けることで、2年目以降は、土の感触や草の種類、野菜の生育に大きな違いが生まれてきます。

「銀ラベル」
草木堆肥歴5年未満の畑。土の団粒化が進み大きな変化が現れ始める。

レーキで畝を平らに慣らす。土が軽くなり、楽になるまで最低で3年。

3年が経過すると、土が柔らかくなり、粒状になっているのが確認できます。(団粒構造)これによって、粒の間に空気と水を蓄えることができるようになり、水はけがよく、作物の根が張りやすいふかふかとした土へと変わっていきます。この頃になると、草取りや鍬・レーキを使った畑仕事の際に土の軽さが変わってきたことを実感できるようになります。葉物野菜の味も合格点をもらえるまでに。ブロッコリー・ズッキーニ・ゴーヤなど地中にしっかりと根を下ろす作物の栽培ができるようになり、葉物野菜以外にもレタス、じゃがいも漬物用のたかなや大根などに挑戦できるようになります。
甘みが乗ってきてむかし野菜の特徴である香りも感じられるようになってくるのもこの頃から。商品として自信を持ってお届けできるのもこの「銀ラベル」からです。

「金ラベル」
草木堆肥歴5年以上の畑。まさに金の土。
味・香り・歯切れ、その存在感は桁違いです。

金ラベルの人参は最高の香り。もちろん葉っぱまで食べられる。

キャベツが結球(葉を巻き込みながら成長すること)するためには、土の力が不可欠。

この頃になると、なにを育ててもしっかりと旨味のある、深い味わいの野菜ができます。鍬を扱う仕事も本当に楽で、リズムよく畝上げができるので、気持ちよく楽しいほど。土の団粒も深さ20cm以上になり、ナスやピーマン・トマト等の実物は、より深くまで根をおろすことと、収穫期間が長いため土の力が無いとすぐに枯れてしまいます。また、人参、セロリなどは、はっきりと差が現れるので、「金ラベル」に達するまでは栽培しません。
今の時代、時間と手間と労力のかかりすぎるこの農法を生産者はもういません。それを評価する消費者の数が減っていることにもその一因はありそうです。

かつての日本では、当たり前だった自然循環農法を、復活させる為のカギは「草木堆肥のみを使用した地道な土作り」にあると思います。

ここにたどり着くまでには、長い時間をかけた実験と失敗の数々がありました。昔ながらの土作りで、小さかった頃に食べたあの懐かしい味と香り。代表の努力と汗、涙がここに結実しています。※佐藤自然農園のブログにて代表佐藤の思いを綴っています。

次回は、金の土の源であり、むかし野菜に最も重要な「草木堆肥」についてお話しします。ではまた次の金曜日に。